![]() |
ストラータスの独特な声質に注目(耳?) |
ルル役をうたっているストラータスは、声質としては低めのメゾソプラノに近く、
高域をうたう箇所では多少無理をしているようだ。
ベルクが「うたえないときはこっちを選択してネ!」と楽譜にわざわざ別指定した、
<簡単バージョン>の方を採用している箇所がちらほらあったりする。
(特に、聴かせどころのはずの第2幕幕切れのあたりは、気になるかも)
近年の『ルル』演奏では、めったにないことなので、逆の意味で珍しい音源だ。
他盤と聴き比べてみると面白い。
ストラータスの魅力は、「うた」と「地の声」との声質のギャップにある。
『ルル』は登場人物の感情の高ぶりや、ドラマの進展によって、
「語り」からラップのような「うたうような語り」、「語るようなうた」、
「うた」の間をモーフィングするように、意図的に作曲されている。
(これはオペラ『ルル』ならではの特徴であり、すごく画期的なことだったりする)
で、ストラータスの地声は、まるで別人であるかのように、低く、
ドスの効いた声なのだ。これはとても怖い(笑)
あの声で「このソファの上であんたの父さんが血を流したのよ」と語るときの凄みは、他の盤にはないものだ。
![]() |
記念碑的演奏!! |
フランツ・ヴェーデキント原作『パンドラの箱』に想を得たベルク未完のオペラ『ルル』は、ツェルハ版、ブレーズ指揮によって完全なる姿を漸くこの世にあらわしたと言えるかも知れない。「ファム・ファタル」こと主人公ルルの転落の最果ての地イギリスで、娼婦にまで身を落とした後に彼女を待っていたのは、「切り裂きジャック」による刺殺という悲劇。ルル臨終を看取る最後のゲシュヴィッツによる歌も圧巻。
第二幕最終部における『聖書』を朗読するルルの姿に、異常なほどの共感を覚えるのは私だけだろうか?
できれば映像付きで!